ワザワイ

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ワザワイ

 防空壕を出ると、昼間だというのに、辺りは何故か薄暗かった。月食にでもなったかと思わせる暗さだ。それに、妙な静けさを感じた。  そんな変化を気にも留めない東海林が「休日の教室に行ってみようぜ」と言い出し、僕たち五人は新校舎へ向うことになった。三階にある僕たちの教室に着いてすぐに、東海林はトイレに行くと云って教室を出て行った。身勝手というか、マイペースというか、振り回されてばかりだ。  少しして、悲鳴に近い叫び声が廊下を突っ切った。生々しい軋み音とビシャッという何かが飛び散る音が聞こえた。  四人に緊張感が走る。 「今の何?」焦慮のままに縁が訊く。  ひた、ひた、ひた、ひた──。  足音? 僕たちはお互いに目を合わせた。タイル敷の冷たい廊下を素足で歩く時の足音だ。右側から来るそれは、廊下を進み近づいてくる。内窓に不穏な影が映った。何かが横切っている。教室の壁が足音の移動に合わせ不気味に変色していった。  ギギ……ギギッ──。  鉄パイプを引き摺るような音が一瞬聞こえた。  刹那、が現れた。
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