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「でかい!」
立ち上がったら五メートルはありそうだ。
人間の姿だが、やせ細り、必要な筋肉を覗いて骨と皮だけだ。目には包帯を巻いている。ねっとりした長い髪と大きな乳房が垂れ、手首と足首には、千切れた鎖の付いた金属の輪っかを嵌めている。そんな化け物が、四つん這いで床を這って移動していた。
僕たちは教室内を逃げ回った。
床を舐めるように進む化け物は、動きを止めては頭を傾げ耳をこちらに向けている。まるで音を聞いているようだった。
近付いてくる化け物を何とかかわし、僕たち四人は廊下へ出ると同じ階の音楽室へ逃げこんだ。縁はピアノの下。拓也は教卓の後ろ。僕と燕は大太鼓の後ろに隠れた。周囲には、ドラム、トライアングル、シンバルなどの打楽器が置いてある。化け物は目が見えない。音を頼りに移動していることは一目瞭然だった。
それが入って来た。一ミリも音を立てず息を呑んだ。少しずつ近づいて来る。
燕は、ギュっと目を瞑り僕の背中にピタリとくっ付いていた。彼女の体温と脈の振動が伝わってくる。
無意識のうちに彼女の肩がトライアングルに触れてしまった。
チリーン──。
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