保育園のお迎え

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保育園のお迎え

「ただいまー。」  今日はめずらしく早番で上がれたため、僕が仕事帰りに息子のお迎えに行った。保育園に行ったことがほとんどなかったので、緊張した。 「ただいまママー!」  息子が靴を放り出すように脱いで、キッチンに駆けていった。 「あー、あー、もう。」  僕は息子の靴を揃えて後を追った。  すると晩ごはんの支度をしている嫁のエプロンを引っ張りながら、息子が言った。 「パパがねー! まみこせんせいにあいさつされて、「つかれがふっとんだー!!」って、すごいよろこんでた!」  いっ、言うなあーっ!!  なんでもしゃべるお年頃の息子に、僕はなす術もなく、キッチンの入り口であわあわした。  すると、鬼の角を出すかに思われた嫁が、鍋から息子に視線を移して、穏やかに言った。 「そう。  それは、よかった。  ……昔はママがその役だったんだけどね。」 「え、なんでいまはちがうの?」 「うーん、わかんない。  いいから、手を洗ってらっしゃい。」 「はーい!」  嫁は1人になると、再び鍋の面倒を見始めた。  染めることもパーマをかけることもしていない髪を1つにまとめて、少しうつむいたその後ろ姿は、どこか寂しげに見えた。  抱きしめたい。  そう思った瞬間、僕は叫んでいた。 「お前が好きだ!!」  結婚3年目の告白だった。
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