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「ポッポッポッポポップコーンっ!」  家に帰り着き、上着をソファーに放り投げたとたんポップコーンのパッケージに手をかける絆。 「どんだけ食いたかったんだよ」 「電車で我慢できる程度っ」  主食外の食いモンになるとほんとガキな絆だけど、とりあえずまあ、その姿からは清澄への未練なんかは欠片も感じられなかった。  ふんっ。  まあ、当たり前だけどな。  清澄なんかもう、過去の遺物だ、遺物。 「うわ、匂いが甘いベーコンだっ」  絆は笑顔で一粒をかじり、ついでとばかり俺の口にも押し込んできた。  キャラメルのコク深い甘さと、塩気の強いベーコンの香ばしさがあいまって、まあ悪くはない。  が、笑顔の延長で咀嚼していた絆の眉は、すぐにウニョリと下がった。 「……うぁー…」 「まあ、あんまりおまえの好きそうな味じゃないわな」 「…うわぁ…俺のポップコーン……」  お前は舞台女優かという勢いで、ラグの上に膝から崩れ落ちる絆。 「だから言ったのに」 「うーっ! あのとき山登がもっと真剣に止めてくれてたらぁーっ! おーいおいおい」  まったくね。  どこの我が儘お嬢様だよ。  まあ、当然それも可愛いんだけどさ。  うん。やっぱこういうのは清澄は知らなきゃいいな。  つか知らなかったからあんな風に手放したんだな。  ふん。ザマーミロ。
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