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プロローグ
ハロウィン。毎年十月三十一日に行われる、古代ケルト人が起源と考えられている祭で、現代では人々が仮装して、「トリック・オア・トリート」とお菓子をもらい歩く楽しいお祭りとなっている。
そして、ある物を見ればそれがハロウィンだと分かるものがある。
オレンジ色のカボチャを顔状にくり抜いて、中にはロウソクをたてる、あれ。
『ジャック・オ・ランタン』
子供の頃、このお化けカボチャを見て一体どんな事を思っただろうか。
怖い? 可愛い? かっこいい? 不思議? はたまた……
「綺麗だねぇ!」
と甲高くも可愛らしい声をあげながら、道端に飾られる『ジャック・オ・ランタン』に向かって満面の笑みを浮かべはしゃぐ少女がいる。
「ねえ写真取ろうよ! 写真!」
スマホの写真アプリを開いて、隣にいる友達を半ば強引に画角におさめ自分もその中に入る。
「ちょ、ちょっと!」
友達は少し困惑の声をあげながらも、写真で一番盛れる位置に顔をおさめる。
まったく、抜け目のないやつめ。
「良いから、良いから! はい!」
「「ハッピー、ハロウィ~ン!」」
画面に映る満面の笑みの自分たちの顔が一瞬止まり、写真がフォルダーに保存される。
「ど? 盛れた?」
少しワクワクな表情をしながら私のスマホを覗いてくる。
「ばっちりだよ! それにしても、綾のんって毎回盛れる位置にくるよね。どうして?」
「ふっふっふ。私がいかに写真を加工せずに盛れるか、何年も研究した結果だよ~」
そうやって黒髪ロングの髪をファサ~とたなびかせドヤ顔する綾のん。
まったく、中学生の頃からそんな事を考えていたのか。この美女め。
「高校一年の言葉とは思えないんだけど」
そうやって苦笑いを浮かべる私。
「いや、あなたが無頓着すぎるのよ。高校一年なんだから、もう少し映えとか色々気にする年じゃない」
少しジト目になりながらこちらを見てくる綾のん。
「あはは~。まあ、私は映えとか興味ないんだよ。それよりこうやって写真撮って見て食べる方が好きだから」
そう言いながらさっき撮った写真を綾のんのスマホに転送する。
「はあ、まあそんなところがあんたの長所でもあるんだけど、もう少し乙女として振る舞いなさいよね。……ちょっと! なんで私の顔に落書きしてるのよ!」
うるさい。説教する奴がただの盛れた写真が貰えると思うなよ!
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