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「ひゅーひゅー」  和未さんは茶化してきた。 「もう、やめてくださいよ。僕は断ったんですからね」 「どうしてよ。こんなの絶対お付き合いできるパターンじゃない。友達と行って恋人と帰ってきましたっていう」 「何ですか、それ」 「どこかの広告のコピー。はあ、現実は小説より奇なりって本当ね」 「広告なんだか小説なんだか」  僕はため息をついた。 「そんなことはどうでもいいのよ。あなた、どうして断っちゃったの? あんなに好き好き言ってたのに」 「言うほど言ってましたか?」 「言ってた。うざいぐらい。で、どうなのよ」 「それは」  僕は言いよどむ。そして、俯いた。あのときの青葉さんみたいに。 「本当は誰に告白したかったか、自分で分かったからです」 「え? どういうこと?」 「どうもこうもないです。僕は青葉さんのおかげでもうかっこつけることはやめました」  緊張で喉が渇いていく。僕はごくんと唾を飲み込む。体が熱い。特に顔が熱い。多分、今僕の頬は真っ赤だ。  僕は胸にいっぱい空気を溜めてからゆっくりと吐いていく。  よし、と僕は心を決めた。僕は自分を受け入れてダサくても素直になる。 「和未さん。僕とお付き合いしてください」  僕は和未さんの名前を呼んで告白した。腹から声を出し、しっかりと伝えた。  一瞬、店内が静まり返る。時が止まったかと思うほどの静けさの中で、グラスの中の氷だけが溶けてカランと音を立てた。 「え? 何て?」  和未さんは聞き直した。普段なら茶化してくる和未さんだが、今回ばかりは本気だ。  多分これが和未さんの本性なのだろう。彼女も普段は僕をからかうことでかっこつけていたのかもしれない。  でも、僕がかっこよくいられるのは彼女の前だ。僕は彼女の前では遠慮せずダサくいられる。 「だから!」  僕は軽く怒鳴ってからもう一度、言葉を伝えた。 終わり
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