アリスターは追放された。

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 中学校の時。クラスの可愛い女の子に告白され、思わずうなずいた瞬間クラスメート達が現れて“ドッキリ大成功ー!超ウケるー!”とやられたのが完全にトラウマになっている。可愛い女の子も泣きだして、“こんな根暗野郎に告白しなきゃいけなかったなんて最低”だとか言い出した。何でも罰ゲームのようなものだったらしい。女の子はみんなに慰められていたが、俺に対しては誰からもフォローがなかった。可愛い女の子の告白を真に受けて舞い上がった惨め野郎として、暫く皆の笑いものにされ続けたのだ。 ――また、同じようなことが起きてるんじゃないのか。  二年。流石に人を騙すには長いような気もするが、世の中には結婚詐欺というものもあるし油断はならない。今お金を請求されていないからといって、将来どうなるかはまったくわからない。  ミホコのことは好きだし、非の打ちどころのない女性だと思ってはいる。だからこそ、不安で仕方ないのだ。自分はまた騙されているのではないか。流石にこの歳になって“ドッキリでした”というのはないと信じたいが、可能性はゼロではないし、詐欺だって有りえないとは言い切れない。  ミホコのことを信じきれない自分が嫌でたまらなかった。彼女と過ごせば過ごすほど好きになり、好きになればなるほど怯える自分がいるのである。  特に最近は。彼女が何やらこそこそと出かけていく事が増えたから尚更に。 ――ミホコは、俺に何かを隠している。  浮気とは限らない。でも、一度その可能性が頭を過ってしまうともう、焼きついたように剥がれることがなくなってしまったのである。  彼女を失うのが怖い。完全に疑ってしまう己が怖い。  そう、まさにそんなタイミングだったのだ。 『どうしても知りたい秘密はありませんか?コチナール・アルファは無味無臭!たった一滴飲み物に入れるだけでアラ不思議、どんな秘密も暴露させちゃいます!』  あの薬のCMを、俺が頻繁に見かけるようになったのは。
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