あの日の約束

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「え?!ちょ、高橋?!どうしたの…」  更衣室で不意に腕を引かれ、早足で自転車置き場まで来た隼人は息を弾ませながら高橋に聞いた。 ようやく振り向いた彼は何とも言えない表情で口を開いた。 「なあ、小川って下の名前って隼人だろ?小川隼人」 「う、うん…そうだけど?」 確かに名字しか教えていなかったが、下の名前を知った所で何だと言うのか。キョトンとする隼人に、もどかしそうな高橋は言葉を重ねた。 「俺の事、覚えてない?高橋啓太(たかはしけいた)」 そう言って、制服のズボンの裾の左側を少しだけ上げた。 「……!」 その足首には、隼人と同じプロミスリングが着いていた。一瞬、見間違いかと思い目をしぱたいて見る。間違いなく三つ編みされたそれは彼の足首に着いていた。 フラッシュバックする、10 年前の引っ越しの日。 自分の足にプロミスリングを結んでくれた彼と「またきっと会えるよ」の言葉。 その言葉通り、彼は今自分の目の前に居た。 「すげーな…」 高橋自身も相当驚いたらしい。「まさかと思ったけど…」と隼人を見る。隼人は未だ信じられない、といった表情をしていた。 「漫画やドラマみてぇ…。運命ってやつ?」 「運命って」 顔は笑っていたが、鼓動は相手に聞こえるのではないかというくらい煩かった。 いくら男でも、「運命」などと言われたらドキドキしてしまう。隼人は誤魔化すように「さ、帰ろ!」と高橋を促した。ポケットから自転車の鍵を取り出し解錠すると、ガタガタと自転車留めから自転車を外す。 「ずっと着けててくれて、ありがとう」 「ん?何か言った?」 高橋が何か喋ったが、それは自転車を外す音でかき消されてしまった。隼人は聞き返したが「何でもない」と返されうやむやなままになってしまった。 高橋も自転車を出すと、二人揃って走り出す。 「なぁ、これからもずっと友達でいてくれる?」 「えっ!何だよ~当たり前じゃん!」 高橋の問に、隼人は笑顔で答えた。 「プロミスリングが無くても、ずっと友達だよ!」 おわり
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