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キーンコーンカーンコーン
あっと言う間に入学式が終わり、1学期の授業が始まった。
1学級30人が各学年5クラスある、こじんまりした高校だ。この辺りの公立高校の中で学力は中の上といったところか。それでも毎年十何人かは国立の大学に進学している。決して進学校という訳ではなかったが、文武両道を掲げる学校で部活動への参加は必須だった。
「では、金曜日までに体験入部を希望する部活を書いて提出するように」
授業が終わり、担任はそう告げると教室を出て行った。
「なー、隼人はもう部活決めた?」
担任が教室を出ていくなり、前の席に座る前川真司がくるりと振り向いて話しかけてきた。
「うーん…弓道か剣道…かなぁ?」
理由は単純だった。昔から戦いごっこが好きで、今も何となく「弓」や「剣」に対して憧れのようなものがあったからだ。
「真司は?決まってるの?」
「俺はサッカー部!小学生から地元のクラブチームに入ってて、今も続けてるんだ。ここのサッカー部にも先輩が居て声かけて貰ってる」
ニッ、と屈託のない笑顔で笑う彼は入学して初めて出来た友達だった。
入学式後、近隣の同じ中学校だった仲間内で既にグループができており、遠方から越してきた隼人は完全に孤立していた。そんな時、出席番号順で前の席に座っていた真司が声をかけてきてくれたのだ。
真司はこの高校から自転車で20分くらいの場所に住んでおり、クラス内には同じ中学生出身の友人が2名程いる。
「そっか。じゃぁ体験楽しみだね!」
「おー!あ、今日途中まで一緒に帰らねぇ?」
「いいよ」
「んじゃ行こうぜ!」
配布されたプリントを鞄に仕舞うと、二人は自転車置き場へと向かった。
自転車置き場は武道場の横にあり、ちょうど弓道部が練習しているのがネット越しに見えた。
「あれか」
「うん…格好いいよね」
自転車を出しながら横目で練習している部員を目で追った。背筋をしゃんと伸ばし、一点を見つめ矢をキリキリと引き絞る…見詰めながら、こちらまで思わず息を止めてしまいそうになる。ヒュッという音がした時には矢は的に刺さっていた。
「おーい、行くぞ!」
「あ!待って!」
真司に声をかけられ、隼人は我に返った。
もう校門近くまで行ってしまった真司を慌てて追いかける。ようやく追い付くと、二人は学校を後にした。
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