20230107/七日の後にほとりへ至る

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20230107/七日の後にほとりへ至る

子どもの頃、家の前に川があった。今はもう道路の下に潜ってしまったから、そこに川があったことなど誰も覚えていないだろう。その川で遊び、小魚や川海老なんかの水生動物を捕まえては友達とどちらが大きいかを競い、時には足を滑らせて危ない目に遭ったり、怪我もした。大雨が降れば土色の濁流が押し寄せて恐ろしい顔をしたし、日照りの年の夏は儚く哀しげな表情で流域を細めた。だから。私は水の匂いには少しばかり敏感だ。晩年は息子夫婦のところで暮らしていて川からは離れていたけれど、土と草と水の混じった川の匂いは郷愁を誘う。それと同時に、後ろ髪を引かれるような悲しみも。 (あぁ、もう三途の川(ここ)まで来てしまったんだなぁ) お題「初」(初七日)
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