生きた花になる

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詳しい説明をする声も言葉も何も頭に入ってこない。オレがFlowerについて知っていることなんてゼロに等しかった。自分には関係ない、異世界の出来事だと心のどこかで思っていたツケなのだろうか。否、大多数の人間にとっては絵空事でしかない特殊な存在について不勉強であることは責められるものでもない。ただひたすらに運が悪かったということなのだろう。 「定期的に水やりをしないと枯れます。あなたの場合、まだ初期症状のようなのでとりあえず汎用性のあるOwnerのストックから試していきましょう。一番相性のいいものを定期的に摂取しつつ、まずは様子見ですね」 そう言われて打たれたジョーロの効果は一週間程度だった。次の摂取も二週間と続かない。相性が良ければひと月に一度でも問題ないらしいから、適合者を探す道のりはまだまだ長いらしい。地道に打たれること二ヶ月、夏休みが明けた。 何とか日常生活は送れるものの、常にまとわりつく虚脱感で何をするにもダルい日々。しかし授業は待ってくれない。特例措置はあるものの、出来る限り出席しないとそもそも授業そのものについていけなくなる。ダラダラと足を引きずるようにキャンパスを歩いていると、すれ違いざま腕を掴まれた。 「お前、顔色悪いよ?大丈夫?」 サークルの一年上の先輩だった。 古くからの知り合いではあるものの、それ程親密でもなく不仲でもない。尊敬はしているものの、余りのキャラの違いに付かず離れずの距離を保っているその人は、目を見開いて固まっていた。 具合なんてずっと悪い。でもおいそれと国家機密に値する特異体質をバラすわけにもいかない。ヘラりと笑って誤魔化そうとしたその時、先輩の目が鋭く光った。腕に食い込む指。 「……お前の匂い、すげぇ甘い……まさか、お前Flower?」 なんで、まさか、そんな。 パニックを起こした脳裏に浮かぶのはブツ切りの疑問符ばかりで、険しい顔をした先輩はオレの腕を掴んだまま問答無用で大学付属の研究棟へと連れ去った。
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