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その時、不意にリヴが僕の手をすり抜け、悪戯をするように古書の山に飛び乗った。瞬間、古書の山が崩れだし、僕は急いで両手を伸ばしてリヴを受け止める。
「危なっ……」
散らばった古書を集めていると、明らかに他とは違う、子供が手作りしたような画用紙を貼り付けた表紙に、墨で『自伝』と書かれた綴じ本が出てきた。
手に取り開いてみると、それは祖父の手書きの日記帳だったのだ。
亡くなった一年前には気付けなかった。どうやら売り物の古書の中に紛れ込んでいたらしい。ひょっとすると祖父は、販売するつもりだったのかもしれないけれど……。
「じーちゃん、見せてもらうね」
僕は一言つぶやいて、翠と一緒にその表紙をめくった。何気ない日常や、祖父より先に亡くなった祖母への愛がこれでもかという程につづられている。
「胸焼けしそうなほど、熱烈だな」
翠が苦笑する。
「じーちゃん。ばーちゃんの事、大好きだったからね」
しばらくページをめくるが、まだまだ祖母への揺るぎない愛は終わりそうにない。
「もう、読まなくていいだろこれ」
「とりあえず、最後の方だけでも読んでみようよ」
愛のメモリーをすっ飛ばして、残り少ないページを開く。
「え?」
瞬間、僕の手が止まった。
それは、祖父が亡くなる前の最期の三日間。
僕と翠は互いに視線を交わす。
そこに書かれていたのは……。
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