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今更のとんでもない発言に呆然となる。
心臓とは、この心臓のことだろうかと左胸を押さえて考えた。しかしどれだけ考え直してみても、これ以外に思いつくものはない。
それはつまり、死ぬと言うことだ。
「願い事を決めるための猶予は三日。そして、心臓を渡さないという願いは無効となる。更に、三日以内に何も願わなかった場合でも、きっちり心臓は頂く。そして最後に、俺の命を奪おうとする行為はペナルティとなり、行動を起こした瞬間に心臓を没収する」
「え? え、え、えぇ?」
次から次へと、とんでもない条件ばかりが加算されていく。
「ちょ、ちょっと! ちょっと待って!」
願い事を一つ叶える。それだけなら、なんの問題もなかった。突然、猫が現れようが、その猫の態度が横柄だろうが、実は悪魔だろうが。願い事をするだけでいいと思っていたので、こんな非現実的な事態であろうとまだ落ち着いていられたのだ。
ーーそれなのに、なんだよその条件!
「それって、願ってもアウト。願わなくてもアウトって事だろ? どうしたって僕は、死ぬことになるのか?」
縋るようにリヴを見る。
「悪魔が見返りもなく人助けするはずが無いだろう。俺とお前は血の契約を交わした。その時点で、これは運命と同義になる。ちなみに過去の契約者達はみな、例外なく死を迎えている」
「そんなっ! ……嘘だろ」
僕は脱力して椅子の背もたれに寄り掛かった。
「こうして、古から人の命を奪い続けてきた。誰よりも長く、誰よりも多く。これが、俺が魔界最強と呼ばれる由縁だ」
そう言ったリヴが、ほんの一瞬何かに絶望しているような表情に見えて、僕の頭の中が余計に混乱する。しかし今の僕に、リヴの表情をいつまでも気にしている余裕は無かった。
『過去の契約者達はみな、例外なく死を迎えている』
先程の言葉を思い出すだけで、自然と恐怖で体が震える。
「どうしよう」
与えられた猶予は三日。
それまでに、生きる為の【願い事】を見つけなければいけない。
僕がいくら楽観的な男とはいえ、さすがに今まで通りのお気楽思考で「なんとかなる!」とは思えなかった。
そんな絶望感の中で、僕のパーカーのポケットが小さく振動し始める。スマートフォンを手にとると、兄の翠からの返信だった。
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