言えなかった言葉

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俺たちは、アヤちゃんの家を出た。 「お兄ちゃん、ありがとう! 伝えることができてよかった。これで思い残すことはないよ」 「あぁ、来て本当によかったな」 ユリの姿がだんだん消えていく。 そろそろ、お別れの時のようだ。 「ユリ、これまでありがとな」 「妹がいる暮らし、楽しかった?」 「あぁ、楽しかった」 「私も一人っ子だったから、お兄ちゃんが欲しかったの。楽しかったよ! お兄ちゃんを紹介してくれたみぃちゃんに感謝しなきゃ!」 「そうだな。ステキな出会いをありがとう」 「うん、あっちの世界で、みぃちゃんに伝えておくね。お兄ちゃんはとっても嬉しそうだった、って。そして、お兄ちゃん……最後に告白するね……お兄ちゃん、大好き!」 そう言って、ユリは消えていった。 遠くから、ハリストス正教会の鐘の音が聞こえてくる。 ユリは天に召されたのであろう。 こうして、俺は妹のいる生活を終えた。
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