言えなかった言葉

9/11
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
俺は言った。 「あの……信じてもらいにくいとは思いますが、今、ここにユリの霊が来ています。ここです」 俺は隣を示した。 「ここにユリがいます。何も見えないとは思いますけど、今、お話すれば、ユリは聞いてくれます」 アヤちゃんは、俺の言葉を信じ、ユリがいると思われる空間に向かって語り始めた。 「ユリちゃん、あの時、作家になるのは無理よ! なんて言ってごめんなさい。告白するね。私、ユリちゃんの才能に嫉妬していたの……だから、あんなこと言ってしまったの……それとね……私、ユリちゃんと同じ中学を受験したくて、一生懸命勉強したの。それでね、私、EI(イーアイ)女子中学に合格したよ! この制服見て! ユリちゃんとこの制服を着て、一緒に写真を撮りたかった……」 俺は言った。 「ユリは、あなたと同じ制服を、今も着ています」 「そう……そうなんだ……よかった……」 「お兄ちゃん、アヤちゃんに合格おめでとう、制服とっても似合っているよ、って伝えて」 「ユリが、『合格おめでとう、制服とっても似合っているよ』って言っています」 「私、人殺しじゃなかったのね。いや、ちょっとは原因あるけど、ユリちゃんは自殺じゃなかったんだね。私にはユリちゃんの姿は見えないけれど、これからもずっと、ユリちゃんのことが大好きだよ。一生の友達だよ!」 ユリの目に、再び涙があふれた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!