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Ⅰ
教室のある校舎から少し離れた人通りの少ない場所に、陽がよく当たる芝生がある。去年の秋の終わり頃にそこを見つけたわたしは、春になったら絶対にお昼寝の場所にしようと決めていた。楽しみにしながら冬を越してようやくやってきた春。満を持してその場所へと向かった。
「やっぱりポカポカしてて気持ち良いなあ」
暖かい春の日差しとそよ風は簡単に眠りへと誘ってくれる。静けさと心地よさに包まれ、わたしは制服のスカートを抑えながら膝を抱えて眠りに落ちた。この心地良さだから、きっと次に目を覚ますのは昼休みの終わりを告げる予鈴の音を聞いた時。
そう思っていたのに、暫く経ってわたしの目を覚まさせたのは鼻先をくすぐるこそばゆい何か。それと心地良い柑橘系の匂い。膝を抱えたまま眠りについていたはずなのに、わたしは横にある何かにもたれかかっている。
恐る恐る目を開けたとき、目の前にあるのはサラサラとした綺麗な黒髪であることがわかった。
「……え? なんで?」
場所は間違いなく先ほどと変わりないはずなのに、誰か来ていた。
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