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第103話 その先の未来
「ルーク、よかったぁああ」
「……アイシャ。お前が無事でよかった」
抱き着いて人目も憚らずに泣く私に、ルークは手を伸ばして抱きしめてくれた。抱きしめるぬくもりは嘘じゃなくて、それがただただ嬉しかった。
決着がつき、周囲の大人たちはホッとしていたのだが──。
「ぐっ……アイシャ、私も極大魔法を使ったせいで、死にそうだ」
「え? 伯父様!?」
「急激に、姪を抱きしめたら治るような気がするぞ。きっと治るはずだ!」
状況が状況なので信じる私に、周囲の大人たちは次々に不調を訴え始めた。
「お嬢様、私も蹴りすぎて足がぁ……。ギュってしてくれたら、きっと治りそうです」
「ロロ!?」
「拙者もあちこち擦り傷刺し傷があるので、抱っこすれば治りそうだな」
「ナナシまで!?」
私はレオンハルトへと視線を向けると、魔人族の姿に戻った彼は戸惑ったように微笑んだ。
「そうですね。私も、抱きしめて、キスをしてくれたらいろいろと治りそうです」
「…………」
レオンハルト以外の要望を叶えることにした。
***
まず先に言い出したルイス皇帝との抱擁をすませた。というのも避難した人たちを西の大広間に移動させたので、その後の説明やフォローを迅速にする必要があった。
西の大広間には音楽隊と、休憩室もあり、軽食の準備も整えている。
事の顛末を何処まで語るかは、政治的背景もあるので大人にお任せしたい。ルイス皇帝とベネディックトゥス教皇、そして近衛兵が向かっているはずだ。
私も聖女として早めに陛下たちの後を追う必要があるのだが、十分な休息を取ってからと言われている。
そう休息時間のはずなのだが──。
「お嬢様、御立派でしたわ」
「ロロ、足は平気?」
「ええ、先ほどお嬢様に治癒をかけてもらいましたもの」
ロロは私を抱きしめたまま、ぐるりと回転すると名残惜しそうに離してくれた。
(私も大人になったら、ロロぐらい胸が大きくなるかしら……)
「よし、ようやく拙者の番だな」
ロロを抱きしめた後で、ナナシが声を上げた。
「まさかナナシまで賛成するとは、思わなかったわ」
「意外か?」
「ええ。だっていつもならロロと一緒に、反対するでしょう」
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