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第104話 イグレシアス家の人々
***
翌日。
もろもろ後処理などがあり、大人たちは生誕祭の間、目まぐるしく働いていた。私も皇族として来賓の対応などを行い、忙しく時間が過ぎていった。
国家転覆は失敗。陣頭に立っていたヴィンセント=シグルズ・ガルシアは魔神王に操られていたが、最期の最期に自らを犠牲に帝国を救ったとルイス皇帝は公表した。
それと同時に教会内部に邪神を崇める者たちがいることを暴き、粛清する旨をベネディックトゥス教皇が語った。生誕祭に太陽の皇帝陛下と、月の教皇聖下の発言により、二、三年後に魔物が大量発生することも公言された。
それにより他国から来賓客として来ていた重鎮たちは、今後の方針として魔物討伐をするため、共同戦線をする方向で進めている。中心となって動いてくれたのは、ルークを含めたイグレシアス家の人たちだ。
さすがは中立国リーベの宰相である。
バタバタはしていたが、生誕祭二日目にはルークの紹介で、私はイグレシアス家の方々と挨拶する機会が設けられた。
「まあまあ、貴女がアイシャちゃんね」と温かく歓迎してくれた。ルークの兄ジェイドとイグレシアス公は目つきも鋭く、図体も大きいので、たいてい子どもたちに怖がられるか、泣かせてしまうらしい。
確かに私の身長では見上げるほどの巨体だ。
(私の周りにも巨漢はいっぱいいるから平気なのだけれど……。ローワンに、ナナシとかそうよね)
「こんな可愛い子がルークの、か、か、彼女!? ジェイドよ、私が触れても怯えないだろうか?」
「父上、それは私のセリフです。きっと私を見て怯えていると思います。もしくは、私が可愛いヌイグルミを作っていると知ってさぞ幻滅したことでしょう。よよよ……」
うん。見た目と中身のギャップがすごい。
私は礼儀正しく、裾を摘まむと、軽く頭を下げる。
「お初にお目にかかります。イグレシアス公、ジェイド様、アイシャ=シグルズ・ガルシアと申します」
「おお!」
「私たちにお辞儀を……!」
「あ、あのジェイド様はあのアソシエイトのお店を経営していると伺ったのですが……」
「そうだけれど……、それがなにか?」
威圧たっぷりに見えてしまうジェイドだったが、私は笑顔で微笑んだ。
「もふもふの猫のヌイグルミが大好きです。あれはグリムヒツジの毛を使っているのですか?」
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