765人が本棚に入れています
本棚に追加
/425ページ
そう言われて自分の異常さを突きつけられる。
確かに当四年前、亜人に対して抱いていたのは大金を出して雇った使い捨て要員。その程度の認識だった。元々難病で死を迎えるだけだった捨て駒を低予算で利用していた。
「だから当時、私は貴方を警戒していた。大義名分さえあればアイシャを処刑台に追いやるだけのことはやってのける、とね」
「……っ」
処刑台、という単語に体が強張る。この男は何処まで知っているだろう。
「……処刑台のこと、アイシャから聞いたのか」
「正確には譫言ですかね。四年前、私が執事だった頃、たまたま聞いてしまっただけですよ。恐らくアイシャは私に言ったことを覚えていないでしょう。もちろん、ナナシやロロにも、この手の事は相談してないと思います」
一瞬、「何故?」という疑問が生まれ、思考を巡らせ答えにたどり着いた。予知夢でそのような可能性のあると知った段階であの過保護なナナシとロロは、俺との接触を控えるようにしていただろう。最悪の場合、暗殺も視野に入れているはずだ。
その事実にたどり着けなかった自分が情けない。
「貴方の強みは『何でもあり』の場合に、発揮する妖刀なのでしょうね。けれど、その恐るべき才能を自分で封じた今まさに凡庸になったものだと思ったのですよ」
確かに。
アイシャと一緒に旅をするようになってから、損得勘定の色が薄れた。それによって非人道的な考えや交渉も少なくなった。亜人を道具ではなく人として認めたのもそうだ。
ただそれによって甘さや効率の悪さが露見する。危険が低い・そこそこの見返りとごく安全な取引も増えたのも事実。
人から感謝されることが増えたが、利益は伸び悩んでいたのもその一つだろう。慈善事業ではないにしても売り上げは以前よりも格段に減った。未来への先行投資と言えなくもないが、そう考えるとアイシャの傍に居ることで、俺本来の強みを半減させているというのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!