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その頃からだろうか。私は晩餐に呼ばれなくなり、父と継母と妹と同席することはなくなったのだ。使用人と同じ食事と寝床。
私の手元に残ったのは、安物のベッドと地味なドレス、そして黒い預言書。
私は私の過去を思い返し、決意する。あんな家に義理立てするつもりはない。婚約破棄も魔法学院に入学する前に終わらせよう。そうすれば少なくとも、悪役令嬢というレッテルからは解放されるはずだ。
(まずは伯父であるルイス皇帝との謁見、それから──)
ふと私はここがどこなのか、思い出してきた。
牢獄でも、屋敷の小部屋でもない布を引いたテントの中。つまりは野宿をしていたということになる。私が聖女として魔物討伐をしていたのは十二歳までだ。
その時は教皇直属の騎士団と共に遠征に出ていた。その騎士団の名は幻狼騎士団。そして私が十二歳の頃、ある理由で、彼らと魔人族は無実の罪で処刑台に送られる。
(……ああ、そうだわ。十二歳の頃から私の味方だった人たちが次々に殺されていった。後ろ盾となってくれたルイス皇帝、相談役となってくれた教皇聖下。そして一番私の近くに居てくれた幻狼騎士団のみんな……)
《審赦の預言書》は、私に少し先の未来を指し示す。けれど、おおよその未来が分かっても、前回の私は未来を変えられなかったのだ。
何よりこの時には、教会の腐敗は広がっており、教皇聖下とその直属騎士団、地方の枢機卿以外は私利私欲のために活動をしていた。幻狼騎士団の失脚を皮切りに、教皇聖下の力を削いだのち、暗殺。
皇帝陛下の指揮下にある軍内部も似たもので、教会の上層部と貴族の一部が結託して玉座を挿げ替える計画が進んでいた。
ヴィンセント第一皇子が皇太子であるうちに、皇帝陛下を病死させて即位させる。私の婚約者はプライドが高く、偏った正義感を持つ人だ。傀儡としてはこれ以上ないほど、おあつらえ向きの人物といえるだろう。
過去の出来事を振り返り、私は今後どう動くべきか思考を巡らせる。
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