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そして彼は魔人族でもある。朱色の入れ墨は上半身に彫っており、黒のズボンに、竜の鱗で作られた甲冑は腰回りと足のブーツのみだ。豪華な毛皮付きのマントは、一族の身分を表すらしい。
「レオンハルト……!」
レオンハルト=サンチェス。
それが魔人族の長の名だ。かつて騎士団と共に、救えなかった一人。
黙っていれば、かなりいい男なのだが、一に戦闘。二に戦闘という戦闘狂で、近接戦闘が特に得意だ。その昔、邪竜を倒したこともあるとか。
「……貴女が目を覚ますのを、ずっと待っていたのですよ」
「え?」
聞き間違いだろうか。流暢な言葉遣いに私は小首を傾げた。
刹那。膨れ上がった殺気に、私は反射的に防御魔法を展開する。無詠唱、予備動作なしでの即時防御壁が出現する。
キィン、と魔法防御に弾かれた金属音が響いた。目にもとまらぬ速さだったが、攻撃をした相手はハッキリと分かっている。
(え、なに、なに? こわい!?)
「やはり、貴女が……」
(全然話が見えないのですけど……)
人の命を狙っておいて、彼は一人勝手に納得しているようだった。
レオンハルトと視線がぶつかると、彼は満面の笑みを浮かべた。
(なになに!? どういうこと!?)
反応に困っていると、彼は片膝ついて、恭しく頭を下げたのだ。さらに私が困惑したのは言うまでもない。
本当に死に戻ったのだろうか?
私の記憶に、このような展開はなかった。
「レオンハルト?」
「重ね重ね非礼をお許しください。あることを確認するために必要なことだったのです……」
「あること? 私への攻撃が?」
「はい。……それでも貴女の気が済まないというならばこちらを」
「え?」
手渡されたのは、二十センチほどの短剣だった。やけに重くズッシリとしたそれを両手で受け取る。
「これで私の首を撥ねてくださ──」
「しないわよ!」
思わず声を上げてしまった。顔を上げた彼は目を輝かせる。
「……! ご慈悲を与えていただき感謝いたします」
(え、本当にあの戦闘狂のレオンハルト……なの?)
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