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彼は、血の付いたままの鋏を掲げて、今にも三原さんに突き刺そうとしていた。
……私がその手を掴むまでは。
「ありがとう。でも、その先は駄目」
「なんでっ!あいつは、あいつはっ……!」
叫ぶ彼、ううん、蛍斗くんは私に問いかけた。
「この、重罪人は、地獄へ、地獄へ落ちるべきなんだよ……っ!」
彼は泣いていた。
私も何故か涙が止まらない。
「もう、もう、良いんだよ。これで」
「どうしてっ……!」
「だってもう、皆、反省してるから」
周りの子たちは皆散り散りになって、ごめんなさいと繰り返し言っていた。
自分が悪かった、もう、許して、二度と、こんなことしない……って。
三原さんもそう。
泣きながら、謝っていた。
「美咲、ごめん……ごめん……本当に……あぁ」
「……みんな、知らなかっただけ。辛さを、痛みを、知らなかっただけなんだよ。これで十分知ってもらった。だから、いい。」
「そんなの……」
「私は、あなたが罪を犯してしまうほうが嫌だ。あなたは、良い人なんだから。また、戻って来てくれた」
私は、久々に微笑う。
……だから、あなたも微笑って?
啜り泣く声が響く教室の中で、二人、
静かに微笑んだ。
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