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「もう、日が暮れちゃった」
「そっちのほうが都合が良い。人が来ないし、何より蛍が見られる」
「……本当だね」
暗くなったからか、ポツポツと明かりを灯しだした蛍たち。やっぱりそれは幻想的で、つい見惚れてしまう。
……いけない。見惚れてたら話は聞けない。
蛍から目を離して、蛍斗くんを見る。
でも、蛍斗くんも綺麗なんだよなぁ……。
「……どうした?そんなに見て。何か付いてるか」
「いえ、何でも!!」
「さっきからおかしいぞ……いや、いつもか」
「何それひどっ!」
「……まぁいい」
良くないけどねと心で呟きながら、話を聞いた。
「美咲は、俺たちが初めて会ったときって覚えてるか?」
「うん。今でも、鮮明に」
彼を見て思い出す。当時とそっくりな顔。
本人だから当たり前だけど……。
「でもな、一つ言い忘れていたことがある。お前に会うのはアレが初めてじゃないし、お前も同じ。前に何度も会ったことがある」
「え。んー……」
「思い出そうとしても思い出せないと思う。
だって俺が、ホタルだった時だから」
……え?
聞き間違いだろうか、ホタル?蛍……
「……まさか冗談?はは、は…………本当?」
「ああ」
いつも通り仏頂面で答える蛍斗くん。
確かに、冗談は……言わないだろう。
「まぁ、信じてもらえないと思うから来た。 順番に話すから時間をくれ」
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