それは必然だったんだよ?

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……俺は昔、蛍だった。 まずお前、昔からここが螢池って呼ばれてるの知ってる?……そう。 ここは、名前の通り蛍の聖地。多いだけじゃない。ここで死んでも、蛍は必ず生き返れる。 つまり、永遠の生をもらえる地なんだ。 俺はそのうちの一人。 ……いや、一匹というべきか。 古代、俺は千年以上前に初めて生まれた。 そして、ある神に会った。 そいつは、人間からは慈悲深いといわれていた神の一人で、この辺りの地域では特に強く信仰されていた。 とはいえ、俺に対しては上から目線の嫌味ったらしい、神とは思えない奴でな。 でもとても気が合う奴だった。 ある時、アイツは禁忌を犯したとかで天界から追放された。それで、良い機会だって人間たちに閉じ込められたんだ……この池の中に。 人間たちにとってはただの使える神だったんだろうな。全ての願いを叶えようとする優しい神だったから。 皆が願い事をしにアイツのとこに行った。 それを、全部一人で叶えようとした。 でも神は万能なんかじゃない。 なのに、アイツの力に頼りきって人間は来た。 叶えられなかったら、勝手にアイツを恨んで、憎んで……本当、人間ってなんて勝手な生き物なんだろうって思ったよ。 だから俺は、人間が嫌いだった。 自分本位の願いばかり祈る人間が。 アイツは、単純馬鹿だったから良かったんかもしんない。だが、俺はアイツが無理しているようにしか見えなかった。 そしてそのうち、力が尽きた。 それが解ると、人間たちはもうここには来なくなった。御社の手入れもされず、ここは荒れ果てた。アイツは笑った。「ごめん」って。 そんな時、お前が来たんだ。 昔、お前は両親とここに来た。 両親が願う中、お前も見様見真似で祈っていた。アイツは偶然お前の願いを聞いた。 『みんなが、しあわせになれますように』 それが、お前の願いだったんだ。 驚いたよ。馬鹿かと思ったよ。 折角の願いなのに、他人の幸福を願うんだから。今までそんな奴はいなかった。 それを見て、アイツは久々に笑ってた。 お前を見て、嬉しそうにしていたんだ。 アイツはお前に興味を持ち、残った力で俺を人間にさせお前に近づけさせた……アイツが行けば良かったのにな。 人間は嫌いだったが、自分の心は一度はなってみるべきだと言っていた。中々そういう機会はないから、と。 そして、あの日。 俺はアイツに人間にさせてもらい……いや、してもらってから、お前に会いに行った。
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