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誰かの声が聞こえたような気がした。
いつかどこかで聞いた声のような気がした。
次の瞬間、彼の周りに集まっていた蛍が一斉に飛び立った。そして、池の向こう側へと消えていった。
「……蛍斗くん」
「……」
「逝かなかったんだね……良かった、良かった……」
「俺は……」
蛍斗くんは、呆然とした様子で涙を流していた。
「……どうして、俺泣いてるんだろう」
「え?」
彼は辺りを見回し、首を傾げる。
「……気のせい、か」
「大丈夫?」
「ああ。誰かと、話していたような気がして」
「……それって、神様なんじゃないかな」
「どうして?」
「だって、さっき蛍斗くん……」
「神?俺、知らないよ」
「……そう」
彼は、知らないと言いながらやっぱり涙を流していた。誰か、蛍斗くんにとってとても大切な人と会ったのかもしれない。
解らないけど、今は聞かないほうが良さそう。
それに、そんな機会はいつでもあるだろう。
「ね、蛍斗くん」
「……ん」
「星、綺麗だね」
「どうかな」
「あ、蛍も綺麗だけどね?!」
「いや、そうじゃない」
「え?」
彼は微笑んで言った。
「……月が、綺麗ですね。美咲さん」
昔、どこかで聞いたような言葉。
何故かその言葉を聞いて、何かを思い出せる気がした。けど、その正体は掴めずに霧となってと消えていく。代わりに頬が熱くなってきた。
「それって……」
「どちらだと思いますか?」
意地悪そうに微笑む蛍斗くん。
この光景は、どこかで……。
一瞬、手を繋いで座る二人が見えた気がした。
きっと、私の思い込みだろう。
口が勝手に動く。
「ずっと、待ってました。その言葉」
私は微笑う。
「……これからは、ずっと共に」
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