絶望の日々

2/2
前へ
/28ページ
次へ
三原さんはフランス人形に似た綺麗な顔立ちの子だ。それでいて、地元の大企業の社長の一人娘でお金持ち。頭も非常に良く、毎回学年トップの成績を叩き出している。 絵に描いたような、才色兼備の少女。 そして、ずっと私と同級生でいた少女。 最初は仲が良かった方だと思う。友達と言えるほどに。だけどいつからか、彼女は私から離れて、私に嫌がらせをするようになった。 理由はわからない。いや、私が何か彼女が嫌なことをしてしまったんだ、きっと。 皆、三原さんの言うことなら何でも聞く。 理由は簡単。私のようになりたくないから。 だから誰も助けてくれることはなかった。 助けたらきっと、私と同じ目に合う。 だから私も、出来るだけ人と交流しないよう心掛けてきた。そうすればきっと誰も、苦しまなくて済むから。私だけだから。 先生にも相談したことはある。 しかし、まともに取り合ってもらえなかった。母には相談できなかった。 心配させたくなかった。 だから、知ってた。知ってたんだよ。 助けなんて、ないってこと。 きっと、永遠に続いていくってこと。 ずっと独りだってこと。 私はハンカチを取りだし、水道の水に浸して、何度も何度も机を拭いた。 三原さんたちはそれを見て嘲笑った。 視界が揺れ、どうにもできなくて瞼を閉じる。 瞼の中に溜まったものが、頬を伝って机にポツリと落ちた。 「もう……無理」 どうせ、助けなんて来ない。 私はいつだって独りだ。きっと永遠に。 毎日毎日こんなことが続いて、それどころかどんどん酷くなっていってさ。 こんなの、耐えられない。 神様。今度は叶えてくれるよね? 鞄から取り出した筆箱の中から、乱暴に(はさみ)を取り出す。煌めく刃先。映る私。そして周囲の嘲笑い声と笑顔。 この中で死ぬのは……嫌だけど。 何もない世界に逝こう。 白い世界で嘲笑おう。 自分の存在ごと消してしまおう。 独りはもう、嫌だから。 ……じゃあね、世界。 鋏を、首に。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加