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三原さんはフランス人形に似た綺麗な顔立ちの子だ。それでいて、地元の大企業の社長の一人娘でお金持ち。頭も非常に良く、毎回学年トップの成績を叩き出している。
絵に描いたような、才色兼備の少女。
そして、ずっと私と同級生でいた少女。
最初は仲が良かった方だと思う。友達と言えるほどに。だけどいつからか、彼女は私から離れて、私に嫌がらせをするようになった。
理由はわからない。いや、私が何か彼女が嫌なことをしてしまったんだ、きっと。
皆、三原さんの言うことなら何でも聞く。
理由は簡単。私のようになりたくないから。
だから誰も助けてくれることはなかった。
助けたらきっと、私と同じ目に合う。
だから私も、出来るだけ人と交流しないよう心掛けてきた。そうすればきっと誰も、苦しまなくて済むから。私だけだから。
先生にも相談したことはある。
しかし、まともに取り合ってもらえなかった。母には相談できなかった。
心配させたくなかった。
だから、知ってた。知ってたんだよ。
助けなんて、ないってこと。
きっと、永遠に続いていくってこと。
ずっと独りだってこと。
私はハンカチを取りだし、水道の水に浸して、何度も何度も机を拭いた。
三原さんたちはそれを見て嘲笑った。
視界が揺れ、どうにもできなくて瞼を閉じる。
瞼の中に溜まったものが、頬を伝って机にポツリと落ちた。
「もう……無理」
どうせ、助けなんて来ない。
私はいつだって独りだ。きっと永遠に。
毎日毎日こんなことが続いて、それどころかどんどん酷くなっていってさ。
こんなの、耐えられない。
神様。今度は叶えてくれるよね?
鞄から取り出した筆箱の中から、乱暴に鋏を取り出す。煌めく刃先。映る私。そして周囲の嘲笑い声と笑顔。
この中で死ぬのは……嫌だけど。
何もない世界に逝こう。
白い世界で嘲笑おう。
自分の存在ごと消してしまおう。
独りはもう、嫌だから。
……じゃあね、世界。
鋏を、首に。
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