恋よ来い

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恋よ来い

「あーあ、どっかから降ってこねえかなあ、恋」  へんぴな場所にあるレモネードスタンドの前。簡易式テーブルに突っ伏した輝本明生はつぶやく。  向かい側に腰を下ろしていた同僚の遊部咲良は、鼻で笑って辛辣に応じた。 「その台詞、今週何回目? 槍が降ってくることはあっても恋が降ってくることはないでしょうね、一生」 「いやいや槍だって降らんでしょ」 「そうね、確かに」飲み干したグリーンレモネードのカップを手に取り、咲良は立ち上がる。「さてと。寄るとこあるから先に行くね。恋したいなら、社内のSNS見てみたら?」 「『今から飯でーす』とか『五分後から報告書作りまーす』って言ってるやつ?」 「それは物流部内の分報でしょ? 会社全体でやり取りしているのを見なくちゃ。どこにきっかけが転がっているかわからないよ?」 「ほーん、なるほど?」明生は寝ぼけまなこでテーブルに置いた小型モバイルの3D操作を始める。「ええと、ここか? ポータルから入って、TOPにある掲示板。うん、まあ、多分、これだろう」  咲良に確かめようと思い目を上げたが、彼女の姿は既にエスカレータートンネルのなかに吸い込まれていった後だった。『禅から学ぶ新しいリーダーのあり方』が欲しいと話していたから、きっと本屋にでも向かったのだろう。
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