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「どうしても飲みたい気分なんですよ!」
そう言い、美紅はバイオレットフィズを注文する。航が飲みやすいカクテルなどを教えてくれるため、すっかりカクテルに詳しくなっていた。
今日もモヤモヤする一日だった。結婚後に住む家を見に行くことになったのだが、婚約者はずっと興味なさそうな顔でスマホを見ている。しかし、美紅の両親と夕食を食べに行った際は、ニコニコと笑い、美紅の肩に手を回した。まるで別人である。
「嬢ちゃん、何かあったのか?」
美紅の横顔を見て、航が訊ねる。その優しい声に泣きそうになりながら、美紅は言った。
「そうですね……。真田さんが何かお話してくれたら、元気になれるかもしれません」
「そうか……」
少し考えた後、航は仕事仲間と猫カフェに行った時のことを話し始めた。猫じゃらしで遊んだこと、おやつを猫にあげたこと、珍しい毛色の猫がいたことなど、いかつい見た目をしている航からは想像できない話題が口から出ている。
(この時間、好きだな……)
猫の可愛さをひたすら語っている航を見て、美紅の胸が誰かに抱き締められた時のように温かくなっていく。
航は自慢話をしたことは一度もない。その日あったこと、行った場所、楽しかったこと、嬉しかったことなどを話す人だ。美紅の婚約者や、今まで話した男性とは180度違う。
「そういえば、真田さんってどんな仕事をされているんですか?」
美紅は疑問に思ったことをぶつける。仕事仲間の話はたまに聞くのだが、どんな仕事を航がしているのか、美紅は知らない。
「嬢ちゃんは何だと思う?俺の仕事」
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