午前零時のジュリエット

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「僕のこの腕時計、イタリアの職人にオーダーメイドで作らせたものなんです。すごく腕のいい職人なので、もし機会があれば美紅さんの腕時計も頼んでみようかなと思っています」 ゴールドの装飾が施された腕時計を、男性は美紅に見せる。キラキラというよりギラギラと言った方が正しいほど派手な腕時計だ。シンプルなデザインが好みの美紅は、顔を思わず顰めてしまいそうになる。 だが、美紅の両親は「素敵な時計ですね!」と褒めちぎり、勝手に美紅の時計をオーダーメイドで作ってプレゼントする話が進められてしまった。だが、美紅は口を開く気にもなれず、お茶に口をつける。 (私、恋も愛も知らないのに、この人と結婚するのね……。一生何も知らないまま生きていくんだ……) そう思うと、どこか悲しくなってしまう。美紅は、普通の家に生まれることができなかった自分を呪いながら、目の前で進められていく話を聞き流していた。 お見合いから数日後、相手の男性から「ぜひ、食事に二人で行きたいです」と家に連絡が入り、喜んだ両親に美紅は食事に行くよう言われ、相手から贈られた派手な花柄のドレスを着て、レストランで二人で食事をすることになった。
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