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高級ホテルの最上階にあるレストランには、世間一般でお金持ちと呼ばれる人しか姿がない。そんな中、フレンチのコース料理を夜景を見ながら食べていた美紅だったが、不意に相手がスーツのポケットから小さな箱を取り出す。
その小さな箱を男性が開ければ、大きなダイヤモンドの指輪があった。その指輪が一体何なのか、美紅は嫌でも理解してしまう。
「お話をしていて、人生を歩めるのはあなたしかいないと感じました。結婚してください」
美紅が答える前に、レストランからは祝福の拍手が送られ、美紅の左手は乱暴に男性に取られ、強引に薬指に指輪を嵌められる。薬指が一瞬にして重くなり、美紅は重くなった原因を喜びではなく虚しさで胸をいっぱいにしながら見つめていた。
(お話をしていてって言っていたけど、あなたしか話していなかったじゃない。しかもいつもくだらない自慢話)
美紅がそう思っているものの、最初から断ることは許されていない。ただ偽りの笑みを浮かべて、幸せそうなフリをする。目の前にいる婚約者となった男性が愛しているフリをしているようにーーー。
美紅の両親、そして相手の両親は二人が結婚することを喜び、結納を済ませた後、すぐに結婚式の準備が始まった。
式場の見学や、披露宴会場の見学、式場が決まったらすぐに招待客への招待状の作成、披露宴での食事の内容など、決めることは山ほどある。
「今日も打ち合わせ疲れた〜……。ダルッ!」
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