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最初は啄むように。ちゅ。と、音をさせて何度も口づける。何度目かに目を開けて葉の表情を窺うと、うっとりと、夢見るように閉じられた瞼が、答えるように開いて、また、目を細めて微笑んだ。
その表情に堪らなくなって、また、唇を奪う。今度は可愛いとは言い難い、深いキス。葉の鼻から、ん。と、吐息が漏れると、もう、歯止めが利かなくなってくる。僅かに開いた歯列の間から、舌を差し入れて、戸惑う葉のそれに絡めると、びくり。と、その細い身体が揺れた。
長いキスから解放すると、葉は、荒い吐息を吐いた。どこで息継ぎをしていいかわからなかったらしい。そんな初々しいくせに、初めての深い口づけに蕩けた表情に煽られて今すぐにでも滅茶苦茶にしたいと衝動が湧く。けれど、不慣れな葉に優しくしたいと、相反する思い。
『シロ…すき』
荒い吐息の隙間に小さく聞こえた言葉に、何とか理性が勝ってくれた。今まで、何を置いても守ってきた宝物をこんなところで壊すことなんてできない。大切にしたい。
『葉。俺もお前が好きだ』
言葉を惜しむことなく、ゆっくり、榛の色の目を見つめて言ってから、そっ。と、指先で掠めるようにその鎖骨の綺麗なラインに触れる。ぴくり。と、小さく身体を震わせても、もう、葉はされるがままだった。榛色の瞳がじっ。と。貴志狼の指先を見つめている。鎖骨を端までなぞった指先が、湯の温かさに朱をさした胸元に滑っていくと、葉は覚悟を決めたかのように。それを待っているかのように、きゅ。と、瞼を閉じた。
『…ん』
薄い胸の先の小さな突起に指先が触れると、葉の鼻から声にならない吐息が漏れる。多分、そこに触れられるのは初めてだろう。快感というよりは驚きのようなものだったのだろうけれど、その自分の声に驚いたように目を開いた葉は、その視線が貴志狼の視線とぶつかると、また、恥ずかしげに目を閉じて顔を背けてしまった。
彼はきっと気づいてはいない。そんな初々しい仕草が、どれほど恋する男を煽っているのか。だから、貴志狼は理性を総動員して、乱暴にならないようにするのが精一杯だった。指先がなぞった順に今度は唇で、同じ場所をなぞる。時折立ち止まってそこにキスをすると、葉はその度に小刻みに身体を震わせて答えてくれた。
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