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『…ありがとな』
好きになってくれて。と、心の中で呟く。
それから、腕に力を入れて、葉の足を開かせて向かい合わせに座らせた。
『え?』
呆けたようにされるがままになってから、一瞬後、すべて隠せなくなるその体制の恥ずかしさに気付いたのか、葉が慌てたように逃げ出そうとする。けれど、葉が本当に逃げ出すことはないことも、自分がもう逃がしはしないことも、決定事項だ。
『一緒にすんだろ?』
ぺろ。と、涙の跡を舐めて、葉の両手を貴志狼の両手が包み込む。外にいた時とは違って、葉の手も温かい。その両手で、二人分のソレを握る。そうすると、意図を察したのか、葉が大人しくなった。
『ん…っ。あ。…あ』
手を重ねたまま、握って再び上下を始めると、躊躇いがちではあるけれど、葉の口からは喘ぎが漏れ始める。本音を言うと、葉の姿に煽られまくって、すぐに限界が来てしまいそうなのを、耐えるのは辛かった。けれど、貴志狼にも男の矜持がある。
『葉。顔、見たい』
何より、感じている蕩けた葉を、もっと、見ていたい。
『…あっ。ん。でも…っはずか…』
片手だけ離して、今日の髪に手を入れ、視線を合わせる。葉は形の好い眉を寄せて、必死に快感に耐えているようだった。それが証拠に、さっきから、貴志狼は手を添えるだけで、二人分のソレを擦り上げているのは葉自身だ。
『…シロ…んんっ…シロも。…イイ? ね? …っあ気持ち…い?』
そんな可愛い質問に、頷いて答えると、葉は嬉しそうに笑って、すり。と、髪に入れた手に頬を擦り寄せる。
『…すき…シロ…』
喘ぎの間に漏らした言葉。欲しくてほしくて堪らなかった言葉に、心も身体も高まっていくのは、止めようもない。
『…葉。違うだろ? いつまで、俺は、お前の犬でいればいいんだ?』
犬でも構わないと思う。
葉のそばにいられるならそれでいい。
けれど、その先を許されるなら、葉を守って寄り添う存在になりたい。
ただ、呼び方ひとつで何が変わるというわけではないし、そんなことにこだわるのは女々しいとも思う。
それでも、きっと、こんな時でなければ言えない。葉が快楽に溶け切って、明日になったら忘れてくれればいいと思う。
『…あっ。ああ…き…貴志狼っ……っん。好き…貴志狼。だいすき…っ』
貴志狼の願いを、葉は叶えてくれた。快楽に溺れそうになりながらも、愛おし気に細めた目が、貴志狼の顔を見て、強請るように閉じる。その唇にキスをすると、葉は鼻から甘い喘ぎを漏らした。
そのまま、もう、全部忘れて、お互いの咥内を愛撫しあう。
一緒に握ったソレも、限界近くまで張り詰めている。
ただ、快感と幸福と愛おしさで満たされた夜はこうして暮れて行った。
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