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「あー葉ちゃん」
そんな二人の様子を少しばかり呆れ顔で眺めてから、壱狼が口を開く。後ろ頭をぽりぽり。と、かいているのは、頭皮がではなく、初々しい二人の様子が、なんかむず痒いというやつだろう。
「じいちゃんから、一つ忠告だ。葉ちゃんは可愛いからストーカーに狙われたりしたら、じいちゃんに言うんだぞ?」
じと。と、貴志狼の顔をねめつけて、壱狼が言う。言外に『やりすぎたら俺がコロす』と、言われているような気がした。
「ありがと。でも、大丈夫。シロがいるから」
けれど、そんな老人の心配もどこ吹く風と葉が笑う。
「位置情報共有アプリ入ってるから、僕の居場所もちゃんと把握してくれてるしね」
耳を疑う一言に、固まったのは、貴志狼だけではない。貴志狼と生き写しと言わるほどそっくりな顔で、壱狼が固まる。
「おなかすいたんだけど…。あ。シロ。僕が朝ごはん、作ったげるよ」
なんだか少し、葉の顔がドヤ顔に見えたのは気のせいだろうか。嬉しそうに、嬉しそうに笑って、葉はまたひょこひょこ。と、足を引きずって部屋を出て行った。
残された祖父と孫。
「お前。尻に敷かれるぞ」
呟いてから、祖父が楽しそうに笑いだす。
その笑い声を聞きながら、葉には一生頭が上がらないとため息を吐く貴志狼だった。
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