臆病者、へぼす

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「こっちも早く、解体せにゃあならんなあ」    その時、突然「へぼす」が意識を取り戻し、むくりと起き上がりました。てっきり死んだものと思っていた、住人たちは、びっくら仰天。大パニックです。「へぼす」は、脇腹に刺さっていたナイフを、すぽん、と抜くと、着ぐるみを脱ぎました。  死んでいたと思っていた狼が、起き上がっただけでもびっくりなのに、ましてや、中から人間が出てくるなんて、誰が考えるでしょうか。  しばらく事態が飲み込めず、ぽかんとしていた住人たちも、冷静になると、人を誤って刺してしまったことに、ヒヤヒヤしだしました。 「すまない、まさか人が中にいたなんて、知らなかったんだ……」  猟師と夫婦は、畳の床に、額を強く押し付け、土下座しました。  これには、「へぼす」も困ってしまいました。なぜなら、本当にちっとも体に影響はなかったからです。「へぼす」の体は、とんでもなくでっぷりしていて、ちょっとナイフで刺したところで、皮膚に傷がついたくらいです。住人たちが、「へぼす」が死んだと勘違いしたのも、胸肉が分厚すぎて、心臓の音が聞こえなかったからです。  右の家で、傷の手当を受けながら、「へぼす」は、銀髪の乙女の姿がないことに気づきました。 「あのう、髪がシルバーの女の子は、どちらに?」  住人たちは、女の子は、「へぼす」がナイフで刺された家(左の家)の、屋根裏部屋にいると教えてくれました。  さっそく手当を終えた「へぼす」は、銀髪の乙女=マーキュリーに会いに行きました。  
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