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臆病者、へぼす
ある村に、とっても臆病者の、おじさんがいました。おじさんは、「へぼす」という名前で、父ちゃん母ちゃんと暮らしていました。父ちゃん母ちゃんは、ヨボヨボのため、数日したら、息絶えそうでした。
「わしらもう、死ぬからのう、『へぼす』、よそで暮らすのじゃ」
「へぼす」の家族は、とんでもなく臆病なため、山奥に隠れて暮らしておりました。実は「へぼす」は、お仕事をしたことがありません。家の貯えもごくわずか。街へ下りる他、ありませんでした。
数日後、父ちゃんと母ちゃんは、仲良く天国へ行ってしまいました。
「お仕事しないと大変だ!でも、街へ下りるのは怖いよぉ…」
「へぼす」は、家にこもり、残り僅かの食糧を抱えて、じっとしておりました。やがて、食糧が完全になくなり、空腹に耐えかねた「へぼす」は、ようやく街へ下りる決心がつきました。
街へ下りるには、まず、暗い暗い森を抜けなければなりません。暗い森には、狼がいて、迷える子羊を狙っています。
「へぼす」は、狼対策に、父ちゃんの毛皮のコートで作った、狼の着ぐるみを着用しました。
「よし、これで狼に会っても怖くないぞ」
さっそく着ぐるみ姿で、えっこら歩いていると、茂みの奥から、恐ろしい狼がやって来ました。
「腹減った、腹減った、何やら人間の匂いがするぞ」
狼が道へ躍り出ると、自分と同じ、どんくさそうな狼が歩いていました。狼は、そのどんくさそうな狼に、声を掛けました。
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