臆病者、へぼす

2/11
前へ
/15ページ
次へ
「ここで、人間を見かけなかったかい?」  狼に声を掛けられた、「へぼす」は、ガラガラ声を作って言いました。 「人間なら、俺がぺろりと食っちまったぜ」  しかし、人間臭い臭いは、あたりにプンプン匂っています。他にも人間がいるのかと、うろうろ探してみたものの、どこにも人間は見当たりません。 「おかしいなあ。人間の匂いがプンプンするんだが…」 「きっと、俺がさっき食った、人間の臭いだろうよ」  「へぼす」の答えに納得した狼は、食糧を探しに、街へ一緒に下りないかと、提案してきました。街へ下りる道が分からないため、一緒に付いていきたいものの、もし人間とバレたら、食べられるんじゃないかと、ヒヤヒヤです。  散々悩んだ結果、「へぼす」は、狼と一緒に、街へ下りることにしました。 「最近、森の中にいてもよぉ、食うもんなんかありゃしない」  狼は、ぶつくさ文句を、「へぼす」に聞かせています。確かに森は、建築業者がどんどん木を切り倒すため、生き物の住処がなくなり、近頃は生き物など、ほとんど見かけません。 「街には何か、うまいもんがあるのかい?」 「ああ。だって、牧場には、牛がわんさかいるし、それに‥…うまそうな人間が、ごろごろ転がっていやがる」  そういうと、狼はじゅるりと涎をこぼしました。大変だ!このままだと、街の人が食われちまう!    これには「へぼす」も悩みます。どうすれば、狼から街の人を救えるのでしょうか。  
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加