臆病者、へぼす

4/11
前へ
/15ページ
次へ
「ギャーーーーーーーー‼」  その悲鳴でようやく、自分が狼の着ぐるみを着たままだと気づきました。 「待って、違うんだ!俺は狼なんかじゃねえ。証拠を見せるから待っててくれよ…」  大慌てで、着ぐるみを脱ごうとするも間に合わず、女の人に、臼で頭を殴られ、気絶してしまいました。女の人は、「へぼす」を柱に縄で、ぐるぐる巻きにして縛り付けてしまいました。 「まさかこんなところに、狼が降りてくるだなんて、怖いわね。さて、この狼、どう処分しようかしら?」  狼を処分できるのなんて、真ん中の家の、猟師くらいです。しかし、猟師は今、服屋に毛皮を売りに出ているところです。なので、あと30分はしないと、帰って来ません。 「困った物ね‥‥」  そこに、2階で作業していた、女の人の旦那が、降りてきました。 「さっき、えらく大きな声が聞こえたんだが、何があったんだ?」  旦那が、女の人に聞いてすぐ、柱に縛り付けてある狼に気づきました。 これには、旦那もびっくりです。 「猟師が帰ってくるまで待っていたら、狼が目を覚まし、食われてしまうかもしれない」  狼に食われる心配をした2人は、鍋に放り込み、ぐつぐつ煮ることにしました。  「へぼす」が目を覚ますと、そこは沸騰した鍋の中でした。体中が熱くて熱くてたまりません。鍋から出ようとするものの、鍋はとても深く、自力で這い上がるのは厳しそうです。 「誰か、助けて!」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加