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「俺がビビってるうちに、みんな食われちまったんだ‥‥」
自分の意気地のなさが、嫌になります。嫌悪感にかられ、うじうじしているうち、狼が家から出て、こちらに向かってくるではありませんか!
「へぼす」は、急いで、狼の着ぐるみに着替えました。丁度のタイミングで、狼が「へぼす」を見つけました。
「よお、そっちは腹いっぱい食ったか?」
狼の口元は血で汚れ、お腹はまあるく膨らんでおりました。
「お、おお…。あんたは、何人腹に収めたんだ…?」
生き残った住人の数が知りたくて、「へぼす」は尋ねました。狼は、指を折りつつ答えます。
「そうだなあ。まず、相撲取りみたいなおばさんに、その旦那。あと、猟師と銀髪の女も食ったな」
「そっか‥‥。ところで、左の家の人はどうしたの?」
「ああ、そいつはまだだなあ。実はさっき、俺が家に入るなり逃げちまったんだ。もしかしたら、もう戻ってるかもしれないな」
「へぼす」は、狼と左の家に向かう途中、今度こそは、絶対に住人を救って見せると心に誓いました。それにしても、さきほどから、狼の声が、妙に違う気がしてならないのです。確か、もっとガラガラ声だと思っていたのに、美しく甘い声なのです。気のせいでしょうか。
左の家の中は、真っ暗でした。どうやらまだ、留守のようです。ここで、待伏せしようという、狼の提案で、「へぼす」も暗闇で、待つことにしました。
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