緑病む時も、健やかなる時も

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子供の頃から歴史が好きだった。 滅びた多くの帝国の過ちを知った。滅びた多数の王国の過去を知った。 そしていつも、不満だった。 賢政の時代は続かない。あるとき輝かしい政治を敷いた帝国があった。 五賢帝、と呼ばれる優れた指導者たちがいた。 しかし。賢人たちにも死は訪れる。彼らがすべて死んだあと、まもなく帝国は衰えて。 異民族に蹂躙されてもろくも滅びた。 多くの失敗の歴史を学んだ。多くの失意の時代を知った。 少年はだから、心に誓う。 僕は、ぜったいに失敗しない。 僕だけは、けっして誤ることはない。 僕だけはけっして、敗れることはない。 唯一、僕を滅ぼすものがあるとしたら。それは、すなわち―― 死、だけだろう。 けれど、僕がその死を乗り越えたなら。 僕を滅ぼす敵はいない。何も僕を揺るがせない。 そして少年は、死をも、たしかに乗りこえる。 そして少年は永遠となる。 永遠に続く賢治。けして終わらない光の王国。 それが少年の求めたものだった。 少年は終わらない光の王国を。 彼が新たに降り立ったその星で。 彼は、その地に築いたのだ。 いや。彼らは、だ。 人は彼らを「四英雄」と呼んだ。
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