1−1 叫ぶ私

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1−1 叫ぶ私

 う〜ん……。  身体にカサついたものが触れる感触と、眩しい太陽の光のせいで私は目が覚めた。すると目の前に飛び込んできたのは、葉の生い茂った木々と青空。そして横たわった体の下にある草むらだった。  え?な、何……一体私の身に何があったの?部屋で眠っていたんじゃなかった?  ここはどう見ても外だ。しかも森の中。  ひょっとしてこれは……夢なのだろうか?  夢かどうか確認するために自分の顔をつねろうと右手を動かした時、何やら自分の手が人の形を成していないことに気がついた。 「ケローッ!!」 (キャーッ!!)  思わず叫んだ時、その声が蛙の鳴き声そっくりだったことに気付き、再度私は絶叫した。 「ケローッ!!ケロケロケロッ!!」 (キャーッ!!私の声がっ!!)  再び蛙の鳴き声が口をついて出てきたので、思わず自分の口を手で押さえようとし……自分の手が蛙の手に変わっていることに気が付いた。 「ケローッ!!ケロッケロッ!!ケロッ!!」 (キャーッ!!私の手がっ!!足がっ!!)  再度蛙の鳴き声で悲鳴を上げたのは言うまでも無かった――。 **** 『う、う、う……何で、何でよ……どうしてわ、私が蛙の姿になっているのよ……』  今、私は森の中と思しき場所にある池の前で水に映る自分の姿を見てさめざめと泣いていた。  あの後、自分の姿を確認するために森の中?を走り回り、ようやくこの池を見つけて、現在に至っている。  勿論、口から漏れる声はケロケロと鳴く蛙の声。それすら聞きたくないので何とか言葉を発するのを極力抑えてはいるものの、どうしても喉からケロケロと鳴き声が勝手に漏れてしまう。 『そんな……自分の容姿が特に気に入っていたわけじゃないけれど……こ、こんな……蛙になってしまうなんてあまりに酷すぎる……』  はっきり言おう。私は爬虫類が好きではない。よく爬虫類を好んでペットにする人はいるようだが、あいにく私はそのような嗜好の持ち主では無い。 『どうせ生まれ変わるのなら……犬か猫になりたかった……』  可愛らしい犬や猫だったら親切な飼い主が見つかって、可愛がって育てて貰えるかもしれない。しかも最近は犬を室内で飼う人々が増えている。つまり雨風や寒さ暑さを感じること無く食事にもありつけ、快適?な暮らしをおくれたはずなのに……。 『誰か、爬虫類好きの人でも通らないかな……。そして拾ってもらえてペットとして飼ってもらって……』  けれどそれは不可能に近い……と言うか、絶望的な願いだろう。仮に誰か人間が私を見つけてくれたとして、ペットとして飼ってくれるだろうか?  恐らく爬虫類嫌いな人ならさっきのように叫ぶだろうし、マッドサイエンティストな人間だったら、解剖されてしまうかもしれない。  おまけに……。  私は見たくもない自分の姿をマジマジと見つめた。池に映る私の姿はなんとも奇妙に見えるのだ。  真っ白な身体に青い目……。この姿が緑色なら保護色として蛙の様々な敵から身を隠せるものの、身体が白なんて目立ちまくって仕方ない。最悪、あっという間に蛙を餌とする小動物に食べられてしまうかも……。  このときの私は自分の行く末を案じるばかりで、背後から近付いてくる何者かの気配に全く気付いていなかった。  そしてここがどんな世界かということも――。
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