第一章:この関係をなんと呼ぶのか私は知らない。

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「あっ」 「誰?」 「すみません、スマホを忘れたみたいで」  ジッと見つめられて動けなくなった。 「番号」 「え?」 「電話番号言って」 「あぁ、えっと」  先輩が通話ボタンを押すと、後方からブーブーとバイブ音が聞こえてきた。 「あ、ありました。ありがとうございました」  振り向いてお礼を言ったら、すぐ目の前に先輩はいた。そして唇が重なった。  えっ、何?  動けなかった。  キス、された?  先輩はすぐに離れて帰る準備を始めていたけど、私は微動だに出来なかった。  なんで?  先輩はどっからどうみても女性で、私も一応は女性で。  いや、仮に男女だとしても、今初めて喋ったような間柄だし。  え、なんで? 「行くよ」 「へ?」 「鍵、かけるから」 「あ、はい」  後をついて部屋を出た。  先輩は鍵をかけて歩き始めた。  私も少し後ろを歩いた。  途中の守衛室に鍵を置いて先輩が向かった先もバス停だったので、ずっと後をつけるみたいな形なった。  バス停では隣に立ち、バスを待つ。  一言も交わさず、目も合わさなかったけど、私は左隣が気になって仕方ない。  先輩は、私のことなんて眼中にないのだろうが。  バスがやってきて乗り込む。空いている席は少ない。先輩が窓際に座る。その隣に座っても良いものか、一瞬迷う。  モタモタしてたらバスが動き出し、身体が揺れて転びそうになる。その瞬間、細い腕が目の前に現れた。  いつの間にか先輩の隣に座っていた。  あれ、先輩が助けてくれたの? 「ありがとうございます」  小さな声だったので聞こえなかったかな、先輩は無言だった。  無言で車窓を眺めている、その横顔に魅入る。  ふいに目が合った。  バスは減速していて、停車するバス停を告げていた。あれ、もうここまで来ていたの? どれだけ先輩の顔を見つめボーッとしていたのか。私が降りるバス停の二つ前だった。 「降りるから」  先輩の言葉に我にかえる。 「あ、すみません」  私は一旦立ち上がり、このバス停で降りるという先輩を通した。再び座ろうと思った瞬間、腕を掴まれる。 「来て」 「えっ」  強い力ではないから、振り解いて座ることも出来たはずなのに、私は何かに引き寄せられるように、バスを降りていた。そしてそのまま先輩の部屋へと入っていた。  なんでだ?
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