心からの言葉をあなたに

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 気付いたら、いつもの朝だった。  狭いベッドで向かい合い、しっかり抱きついている。 「あぁ……」  昨夜のことを思い出し、思わず声が漏れる。情けないーー傷ついて泣いていた恋人よりも先に、私寝落ちしたんだ。 「起きたの?」  いつも通りの優しい声だった。 「ごめんなさい」 「ん、何が?」 「先に寝ちゃって……呆れてるよね」 「あぁ……ふっ、可愛い寝顔見られたから許してあげる」  思い出し笑いみたいだ、私、寝ている間に何かした? あ、そんなことより。 「昨日、なんで泣いてたの? 私のせい? ちゃんと言ってね、私鈍感だから言ってくれないとわからないから」  笑顔が少し真剣な表情に変わる。 「そういうところ……あぁ、天寧のせいじゃないから。ただちょっと、悲しくなっただけよ」 「なにが?」 「私は……そのつもりだったもの」 「ん?」  言いにくそうに少しの間が空いたのは、私がわかってあげられなかったから呆れたのかも、えっと昨日は何があったっけ、もしかして。 「紫穂ちゃんが言ってたアレ」 「あ、週末婚ってやつ?」  そういえば、あの時悲しい顔してたっけ、一瞬だったから気のせいだって思ってた、なんで気付けなかったんだろう。 「あんなにハッキリ否定されちゃったらね」 「いやあれは、だって、まだ学生の身分だし」 「そうだよね、天寧はまだまだ、これからいろんな出会いもあるだろうし、遊びたいだろうし、縛っちゃいけないよね」 「え、え? 違うよ、そういう意味じゃなくてーー」  やだ、そんな風に思ってたの? 「私まだ、経済的にも自立してないし頼りないしーー」  誤解だよ。 「だから、まだそんなんじゃないって言ったけど、いつかは栞菜ちゃんとって思ってるーー」  分かってよ。 「他の誰かじゃなくて、栞菜ちゃんがいいの。私が栞菜ちゃんを幸せにするから」  あれ、なんだかプロポーズみたいになっちゃった、しかも上から目線で恥ずかしい。でも私の本気度を伝えなきゃ。  栞菜ちゃんは途中から、手で顔を覆ってしまっていた。やっぱり私の発言はイタかったかな? 「本当だったんだ」  ようやく顔を見せてくれた栞菜ちゃんは笑顔だった、良かった。 「ん? 本当って?」 「昨夜、私に言ったこと覚えてないんでしょ?」 「え?」 「やっぱり! 寝ながら喋ってたもの」 「なんて?」  私は寝ぼけながら、何を喋ったの? 「最初はね、好き大好きって言い続けていて」  マジか、恥ずっ。 「本当に? って聞いたら、本気だよって言ってね」  それは、本当のことだ。 「なら結婚してくれる? って聞いたらね、私が栞菜ちゃんを守ります、幸せにしますって言ったのよ」  すでに寝ながらプロポーズしてたとは。 「なんてことを……穴があったら入りたい」  思わず口にした言葉に、あぁコレってこういう時に使うのかと場違いな事を考えていた。一種の思考停止かな。  栞菜ちゃんの手が私の頬に触れる。ひんやりしていて気持ちいい。 「真っ赤だよ」  でしょうね、さっきから顔だけ異常に火照っている自覚はあります。 「寝ぼけていて、覚えていないのは不本意だけど、それは心からの言葉だから」 「じゃあ、もう一度言ってくれる?」  よく見ると、栞菜ちゃんの頬も薄っすら赤みがかってる。やっぱり、まつ毛長いなぁなんて思いながら言葉を探す。  私の心からの気持ちを言い表す。 「愛しています」
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