甘い話は決定事項

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「明日のために、今日は早く寝るよ」 「はぁい」 「楽しみだね」 「うん、とっても」  明日から一泊で温泉旅行に行き、帰って来たらウチでそのまま泊まって、翌日の月曜日の祝日に栞菜ちゃんは帰って行く。今日を含めれば4日間一緒にいられるんだ。 「栞菜ちゃん、先にお風呂どうぞ」 「ん、行ってくるね」  チュッと軽くキスをして立ち去る後ろ姿に、やっぱり好きだなぁと想いに耽る。出逢ってからどんどん好きな気持ちが積み重なって行く、それはきっとこれからもで……この先?   あぁそういえば、栞菜ちゃんにはまだ言ってなかったな、卒業後の事。  栞菜ちゃんの就活の時は、私に相談してくれなかったって散々拗ねたくせに、いざ自分のこととなるとやっぱりなかなか言い出しにくい。自信がなかったり恥ずかしいのが主な理由なんだけど、それでもちゃんと伝えておくべきなんだよね、大事な人には。  栞菜ちゃんなら、天寧が決めたことならって応援してくれると思うから、今回の旅行で伝えられたらいいな、いや伝えなきゃだ。 「うわっ」 「また自分の世界に入ってたね?」  いつの間にか目の前に栞菜ちゃんがいて驚くが、こういう事は初めてじゃない。私がぼーっとしているせいだ。  栞菜ちゃんは、それも面白がってくれているけど、ぼんやりし過ぎじゃないか、私。 「はは、もう上がったの?」 「うん、天寧も行っといで」 「はぁい」  私がお風呂から上がると、栞菜ちゃんが神妙な顔で電話をしていた。 「ーーうんわかった、そうする」 「どうかしたの?」  通話を終えるのを待って尋ねた。  心なしか顔色も悪いように見える。 「おじいちゃんが倒れたって」 「えっ」 「今は母が病院についてるらしい」 「すぐ行った方が……」  時間を確認する、まだ電車はある時間だけど遠ければタクシー? 「ううん、今日はもう遅いから。もし何かあれば連絡入るから」  ということは、予断を許さない状況ってことだよね、こんなに不安そうな表情の栞菜ちゃん見たことないもん。思わず抱きしめていた。 「明日、1番に行ってあげて」 「でも、温泉ーー」 「え、温泉なんていつでも行けるよ、私のことなら気にしないでよ?」  以前、話してくれたことがある。中学生の頃におじいさんの家で暮らしていたって事、可愛がってもらった事。栞菜ちゃんにとってかけがえのない人なんだと思う。 「お姉ちゃんも明日の朝出るって」 「どこかで合流するの?」  不安げな栞菜ちゃんの様子から、お姉さんと一緒ならいいなと思った。 「ううん、◯◯市だからここから直接行くことになるね」 「えーー」 「ん?」 「栞菜ちゃん、明日私も一緒に行ってもいい?」 「一緒に?」 「私の実家、隣の市なの。だから途中まで一緒に行って、私は実家に泊まろうかと思う、ダメかな?」  今もまだ少し震えている栞菜ちゃんを一人にしたくない、何も出来ないかもしれないけどそばに居たいと思う。 「天寧、ありがとう」
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