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「うわぁ〜ん、また石を投げられた。バケモノはあっちに行けと言われた〜」
五歳になったアガ王子はテネリ王妃の膝に泣きつきました。
王妃は王子のもしゃもしゃの髪を優しく撫でます。
「アガ、貴方は決して『バケモノ』なんかではありませんよ」
「そうですよ。アガ様はお優しくて賢くて、そこら辺の鼻垂れ小僧よりずっと立派です。今度そんな事を言う子がいたらシュネをお呼び下さい。げんこつでも落としてやりますから」
そう言ってヤギのミルクを王子に渡したのは、あの日一緒に城を出た少女でした。
あれからずっと、テネリ王妃とアガ王子のお世話をしているのです。
「母様はこんなに美しいのに、僕はなんでこんな醜いんだろう…」
王子は涙を手で拭うとシュネが渡してくれたミルクを飲みました。
泣き疲れて寝てしまった王子にシュネがそっと布をかけます。
「シュネありがとう。優しい言葉をかけてくれて」
「そんな…本当の事ですよ。産まれた時には確かに驚きましたが、アガ様は素直でお優しいですもの。どんどん可愛く見えてきてシュネはアガ様が大好きなんです。王様もちゃんとアガ様を見て下さっていればきっと…」
そう言いかけて慌てて口を抑えました。
「テネリ様申し訳ございません。余計な事を…」
「良いのですよ、今は新しいお妃様の間に王子が誕生した様ですし、王様も安心された事でしょう」
「あんなにお祭り騒ぎして!アガ様は誰からも祝福されなかったのに…。シュネは悔しくて悔しくて…。お二人はこんな所に住んでるお方じゃありませんのに…」
シュネはつくえを拭く力を強めました。
繕い物をしていたテネリ王妃は手を止めてシュネの背中にそっと手を添えました。
「シュネには苦労をかけてすまないと思っています。ですが私は貴方達と暮らせてこの上なく幸せなのですよ。ただ、やはり中々アガはこの世には受け入れて貰えないものですね。あの子が傷つく度に心が痛みます」
シュネはテネリ王妃手を握り締め頷きながら涙を流しました。
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