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お城ではイエティス王の代わりにまだ幼い王子が王の椅子に踏ん反り返って座っていました。沢山の家来は幼い王子の言いなりです。 何故なら幼い王子は気に入らない事をする者を簡単に処刑してしまうからです。 誰からも愛されなかった王子は愛する事を知りませんでした。 イエティス王はこの数年、病に侵され寝たきりになっておりました。 窓に映る景色は真っ白な雪に覆われ、音は雪に吸い取られとても静かです。まるでアガ王子が産まれた日の様でした。 イエティス王がふと目を開けると金色に輝く綺麗な男の子が立っています。 でもイエティス王はあの時の様に剣を持つ力はありません。濁った瞳で男の子を見つめました。 「惨めだね」 男の子はイエティス王を冷たい目で見下ろしました。 「君は何を守りたかったの?」 イエティス王はエレン王妃を思いました。 「僕はちゃんと伝えたのに君は約束を守らなかったね。だから君は何一つ守る事が出来なかったんだよ。国も愛してくれる人も愛する人でさえも」 イエティス王は初めてテネリ王妃以外の多くの者を思い出しました。国の民や、新しいお妃様の事、幼い王子、そしてどうしても受け入れられなかったアガ王子の事も…。 「すまなかった…」 イエティス王はしゃがれた声を絞り出すと一筋の涙を流しました。 そしてそのまま息を引き取られたのです。 「愚かだ」 男の子はため息をつき、夜空を見つめました。アガ王子の誕生の時に見られた沢山の星などありません。暗く重い夜空が今にも雪と共に落ちてきそうです。 「君も愚かだね…情けなのかい?それとも愛なのかい?」 男の子は夜空に問いかけました。 重い夜空の隙間から覗く小さな星が静けさの中であの王妃の髪の様な金色の細い光をイエティス王に照らしていたのでした。
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