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その頃、イエティス王は城の塔の一番高い部屋にいました。
体の弱い王妃とまだ産まれぬ我が子の無事を祈る為です。
どんなに力があろうとも、どんなに知恵があろうとも今は無力に感じます。
王は塔の窓から国を眺めました。国は真っ白に埋まっています。そして夜空には今まで見た事もない程、沢山の星が煌めいていました。
『その子はこの国の為に尽くす素晴らしい王となるでしょう』
男の子の言葉がイエティス王の中に響き渡ります。
窓から見える景色を見ていると、この雪の様に真っ白な心で煌めく夜空の如く美しい国を作る子供が産まれてくると神に言われている気がします。
しかし、誕生した我が子を見て言葉を失いました。
思い描いていた我が子の姿とは天と地ほどの差があったからです。
これが自分と美しいテネリ王妃から産まれた子なのか?
まるでバケモノではないか…。
「王様、私達の子供ですよ。頑張って産まれてきてくれました」
テネリ王妃は嬉しそうに言いましたが、イエティス王は何も言えませんでしたし、赤ん坊に触れる事も出来ません。
「王妃よ疲れたであろう。ゆっくり休め」
そう言うと部屋を出ていきました。
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