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産まれた王子は『アガ』と名付けられました。しかしその名は王妃がひとりで名付けられた名前でした。イエティス王は殆ど王子に会おうとはしませんでしたし、テネリ王妃と王子の話をする事を嫌がったからです。
アガ王子は穏やかな子でした。瞳はルビーの様に赤く輝いていて、小さな手でテネリ王妃の指をギュっと握ります。王妃は王子が愛おしくて仕方ありませんでした。
王妃は乳母に預ける事なく、ずっとアガ王子の側にいました。何故なら皆アガ王子に近寄ろうともせず冷たい目を向けるからです。
王妃には分かりませんでした。
見た目は普通の子供と違っているかもしれませんがそれだけの事だと思っていたのです。他に何の問題もなく、迷惑をかけている訳でもありません。何故皆は無力でか弱い産まれたての王子に冷たい言葉や態度を取るのだろうと。
ある日、テネリ王妃がアガ王子に乳を与えている時にイエティス王が部屋に入ってきました。
美しい王妃の乳に吸い付く醜い王子を見てイエティス王は我を忘れて王子を剥がすと投げ捨てました。
王子が落ちた場所が柔らかいベッドの上でしたので大事に至りませんでしたが、この出来事でテネリ王妃はたいそう心を痛めて部屋に閉じこもってしまいました。
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