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王の悩み
イエティス王は悩んでおりました。何よりも大切で愛しているテネリ王妃を傷つけてしまったからです。ですが王子の姿を見ると胸から黒い塊りが出てくる程の憎悪が湧きあがります。
国民には王子の誕生を伝えていません。
王は有能な占い師を呼びました。
アガ王子を占ってもらう為です。
占い師は大きな水晶玉を見つめて目を輝かせました。
「王様、こ、これは素晴らしいです。アガ王子は王様の聡明な頭脳と王妃様の優しさを持ち合わせております。アガ王子がこの国の王となれば今まで以上に豊かで平和な国になる事でしょう」
王は占い師の言葉を聞くと深いため息をつきました。
「そうか…では、もし王子が私の後を継がなかたらこの国はどうなる?」
占い師は再び水晶玉を見つめると、眉間に皺を寄せました。
「この国は欲にまみれ汚れて滅びてしまいます」
「何?欲にまみれ滅びるだと?」
王は手で顔を覆いました。
王はこの占い師をとても信頼していましたし、この占い師の助言で何度も助けられてきました。
なのに、いえ、だからでしょうか王は絶望感に支配されていきました。
そしてふと思いました。
自分が醜い王子を本当に愛さずとも、愛するふりさえすればいいのだと。
王は深い深呼吸をするとテネリ王妃に会いに行きました。
王は不安でした。部屋に閉じこもってから会っていませんでしたし、王妃は自分に失望していると思っていたからです。ですが王妃はイエティス王が会いに来てくれた事をとても喜んで迎え入れてくれました。
久々に会うテネリ王妃は変わらず美しく王の心は締め付けられます。
そして視線を少し下にずらすとその胸に抱かれ寝ている王子がいます。イエティス王は初めてアガ王子をしっかりと見ました。小さな丸い体に大きな頭、カエルの様に飛び出そうな大きな目、王は顔をしかめました。
この醜いバケモノを王子として認めなければ国が滅んでしまうかもしれない。
イエティス王は悔しさが込み上げてきました。
こんなバケモノに自分の国を渡したくないと思ったのです。
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