主上は目が覚めたーー▼ どうするーー、コマンド▼

第一コマンドーー、了▼

　シトシが玉座にて白目をむいてから数日、

『奇跡の聖王』誕生ーー

という報が大陸中を駆け巡った。
　大陸には大国と呼ばれる国が八つ存在しており、小国も複数存在する。衝撃の度合いこそ違えど、その全ての国にシトシの名前が知られ渡った。
　『聖王』を名乗るという点において、周囲の国から警戒されたためだ。
　なにしろ、古に実在した『聖王』がかつては大陸中の国を併呑し、一大王国を築き上げた。
　そして過去に、古の『聖王』に倣おうと『聖王』を僭称する王が複数出現している。
　これらは例外なく大陸に覇を唱えようとし、全て失敗した。これは、周囲の国から警戒され、国同士の争いを引き起こす危険な王として滅ぼされてきたからだ。

　今回の報も、当然ながら危険を孕んでの僭称と受け止められているーー。
　各国はセイシン王国の動きを探り始める。
　もし、シトシが危険な思想をもつ人物であれば数ヵ国による連合が結成され、セイシン王国は攻め滅ぼされるであろう。いや、若き蒙昧な王である場合も同じく、である。他国の混乱に乗じるのは兵家の常……。
　いずれにせよ、シトシの思惑から大きく外れて大陸は混沌の兆しを見せ始めるーー。