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「一生治らなくて君を苦しめるくらいなら、ここで死ぬ!」  禎雄が叫び、思わずいつきは飛び出した。 「ちがう、そんなの絶対ちがう!」  いつきは泣いていた。 「なんで、そうなるんですか? 想い合っているのに、互いに相手が幸せになることを願っているのに、死ななくちゃいけないんですか!」 「俺が消えれば、いつか俺のことは忘れて、桜子たちは幸せになれるさ。消えても誰も気にしない」  昔いじめられていた時、いつきもそう思っていた。でも《天びん秤》さんが、自分を見つけてくれた。 「ボクらは誰にも気にされないほど小さな存在かもしれないけど、誰かを想うことができる。だったら、ほんのちょっぴりでも、誰かがボクらを想ってくれることもある筈です。禎雄さんには、こんなに想ってくれる桜子さんがいるのに……ボクも『死にたい』と思いながら今日まで生きてきた。それでいいじゃないですか。普通じゃなくても変でも、できてもできなくても、いい夫いい父じゃなくても、『すみません、つらい、死んだ方がましだ』と思いながらでも、生きてりゃいいじゃないですか。周りに迷惑かけようが、開き直って、生きればいいじゃないですか!」  いつきは振り向いて、桜子に叫んだ。 「一生治らない病気なら、そういうもんだって、みんなで飲みこみましょう。桜子さん一人で何でも抱え込まなくていいんです! 桜子さんが苦しんでいるから、禎雄さんが、早く治さなきゃ、と焦るんじゃないんですか?  うつ病であれ、どんな病であれ、家族だけに背負わせるんじゃなくて、会社や社会も支えてくれなかったら、おかしい! そんなのおかしい!」
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